心に宿りし者『・・・・ここは?』レルドは真っ白な空間に立っていた。 壁はなく、どこが地面でどこが空なのかもわからない。 (つ~か、俺って死んだ?) (頭の中で声がして、・・そのあとは―) (・・だめだ、わかんねぇ。) コツン (足音??) とりあえず音のなったほうを見る。 その方向を見た瞬間、彼の目には理解できないものが映っていた。 『ぁ?・・俺!?』 驚きが素直な言葉となって放たれる。 そこには彼と同じ姿形をした人が立っている。 『・・・そう、俺はお前。お前の影だ。』 そういってレルドの形をした誰かが歩み寄る。 『意味わかんねぇ・・・』 気がつけば足が後ろに下がっている。 人とは突然理解できないものに遭遇すると身体の一部は意識に反して勝手に動き出す。 『・・怖がるなよ。』 そういって影は笑いながらレルドに近寄る。 『ここは、お前の心だ。』 『心の中につくりだされた感情の入れ物、怒りや憎しみの捨て場所さ。』 影はなにを思ったのか、おもむろに武器を構える。 『本来この身体を支配してるのはお前だ。』 『けど今は?・・・今この身体を支配してんのは俺だ。』 『なぜかわかるか?』 急な問いかけにレルドは戸惑いつつも冗談っぽく答える。 『ぁ~、戦いの中でイカレたとか・・・?』 (わけわかんねぇよ。なんだよコイツ・・・) まだ自体を把握できていないが徐々に落ち着きを取り戻す。 『答えは簡単だ。憎しみが、怒りが、虚無がお前の心の器に収まりきらなくなったのさ!』 『俺から身体の支配権を取り戻したけりゃ、俺に勝ってみせろよッ!』 その言葉と同時に影は褐色した血のような色の光を纏う。 次の瞬間、影は槍を突き立ててきた。 ガガッ 鈍い音を立てて影の持つランスとレルドの持つランスが交差する。 刹那の間、影とレルドはお互いを見据え、再び距離をとった。 ~end~ ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|